WWD JAPAN SUSTAINABILITY SUMMIT 2023

2023年12月11日(月)に東京ポートシティ竹芝ポートホールにて開催された「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」に行ってきました。会場では半日かけて5つのテーマについてセッションされ、会場横の特設ブースではポートレイト撮影やVR体験ができたり、コーヒーや紅茶が振る舞われたりと賑わいを見せました。

ここでは各テーマについて簡単にご紹介します。

#SESSION 01
環境危機下でのモノ作りと
デザイナーの役割とは

パタゴニアメンズ・ライフ・アウトドアグローバル・プロダクト・ライン・ディレクターのマーク・リトルさんが来日され、パタゴニアの誕生秘話や企業ポリシー、パタゴニアの商品作りについてお話しされました。
パタゴニアはアウトドア好きの創設者がクライミングツールを作るところから始まり、地球への情熱と高いクオリティをベースにサステナブルなモノづくりを追求し続けているそうです。
印象的だったのは、パタゴニアは大々的に広告などは出すのではなく、見つけてくれたお客様にサステナブルで長く使える商品通して信頼され、コミュニティに招き入れることで「モノとの関係をもう一度考えませんか?」というメッセージを発信しているというお話でした。
サプライヤーは責任を持ってモノを作り、消費者は本当に必要なものだけを最後まで愛する気持ちで買うという意識が全ての人に広がってほしいと思いました。


#SESSION 02
榮倉奈々さんはなぜ経営者となり、
ブランド「ニューナウ」を立ち上げたのか


2023年秋に「ニューナウ(newnow)」を立ち上げた榮倉奈々さんが、自身のサステナビリティの意識が芽生えたきっかけや、ブランドを通して実現していきたい未来についてお話しされました。
きっかけには、お子さんを出産したことで子供の未来について考え、大人としての責任を果たしたいという思いがあったそうです。
今までのご自身の経歴や、一緒にブランドをつくるスタイリストの上杉美雪さん、クチュールディレクターの福屋千春さんの支えもあり、美しく日常に寄り添うサステナブルアパレルブランドが誕生されました。素材にこだわったタイムレスなお洋服を受注生産で必要な人にだけ届け、いつまでもファッションの楽しさを感じられる未来を目指していると聞いて、ブランドのこれからにぜひ期待したいと思いました。


#SESSION 03
社会問題の解決や地域復興における
デザインの役割

良品計画代表取締役会長の金井政明さんとリトゥンアフターワーズ代表の山縣良和さんの対談から、地域の可能性やデザイン役割について伺うことができました。
良品計画の「無印良品」は山縣さんも学生時代にファンだったそうで、ブランド創立時から「素の自分に」(他者との比較や妬みのない場所でほっとしたい時に選びたい商品)というテーマのもと、生活価値を高め役立つ商品だけを、自己主張のない洗練されたデザインで展開されています。今後は人の繋がりに目を向け、地方の生活に寄り添うようなまち全体を巻き込んだライフスタイルのデザインにも幅を広げていくそう。
山縣さんは自身のブランドの他に「ここの学校」というクリエイター育成プロジェクトにも力を注がれ、自分のルーツを探ることで自分にしかない発想や価値を見出し、心の持続可能性を養う活動をされています。
お二人の対話の中で興味深かったのが、ファッションデザインとは「心の産毛」であるという例えで、心の内面をデザインとして外側に出すことで自己主張や、社会への問題提起などの意思表示になるという内容でした。私たちが服を選んで着ることも同じような意味を持つのではないかと感じました。


#SESSION 04
時代のキーワード"生物多様性"を理解する
〜ファッションとの関わりとは?〜

専門家であるケリングソーシングのサブリナさんとコンサベーション・インターナショナル・ジャパンカントリー・ディレクターのアメリアさんより、生物多様性の必要性やファッションはどうあるべきかについて学びました。
地球上には3000万種の生物が深く関わりって生きており、その一つが絶滅することで他の種や環境に大きく影響を与えるそうです。実際に種の減少によって、今の地球環境は危機的状況だと言います。
状況を変えるには、まず傍観をせず、私たちが自然の一部なんだということに気づき、資源を使いすぎたり破壊したりすることをやめ、再生していくことを前提にサスティナブルな生産と消費にシフトしていくことが必要だと強調されていました。
ファッションの原料は、農業や家畜産業と密接な関係にあるため、土壌を守る有機栽培過放牧を防ぐ輪換放牧の考え方が広がる必要がありそうです。


#SESSION 05
大量廃棄の現状を古着の最終地点である
ケニアの視点を交えて考える

まず、実際に現地で撮った写真のスライドを見て、道や川に溢れる古着、山積みにどこまでも広がる服の埋立地に衝撃を受けました。
今年の夏に現地を訪れたunisteps共同代表の鎌田安里紗さんに解説頂きながら、現地から「キコロメオ」のクリエイティブ・ディレクターのイオナ・マクレスさんに所感を伺いました。
鎌田さんによると、ケニア・ナイロビ近くの港にイギリス、中国、アメリカ、パキスタン(を経由して日本)から古着が送り込まれ、そこから売れる状態のものをピックし、サイズ直しなどをして1枚50円ほどでマーケットに売り出しているそう。
古着が大量にあることで、ケニアのファッション産業が成り立たなくなり、経済のみならず健康も脅かされている状況を知り、私たちには服のエンドオブライフを考える義務があると強く感じました。
イオナさんは、ハンドペイントアーティストの方とともにケニアの文化を再生させるため、天然素材を使用したメイドインケニアの服作りをされおり、現地では古着を着ることがとても身近で、古着のアップサイクルが盛んに行われていると話されました。
また、大量廃棄の原因とも言える大量生産・低価格・大量消費に対して、捨てる側が変わらなければならないことを伝え、適正価格服の最終地点を頭においた生産・消費量を考えなければならないと締めくくりました。


#PRESENTATION
シーチングのリサイクルプロジェクト


アップサイクルブランドDOKKA vividのデザイナーとして活動する2人が、大阪文化服装学院在学時に取り組んだ「シーチングのリサイクルプロジェクト」についてご紹介いただきました。
学生の間でも75%以上が仮縫いの過程で使い捨てするシーチングにモヤモヤを感じ、95%以上の学生がサステナビリティの取り組みに意欲を示していたそう。
コットン100%である使用済みのシーチングを回収し、紡績工場でリサイクルしてまた学校で使用するというサーキュラーモデルを確立し、少しずつ全国の服飾学校に広がっているそうです。

今回のサミットに参加したことで、変えなければならない問題点が見えてきたと同時に、登壇者の方が示してくれた改善への道筋も学ぶことができました。私を含め、参加者みんなが考え行動することで、日本のファッションがさらにサステナブルなものになるように願っています。

ー END ー

Follow me!