映画レビュー「燃えるドレスを紡いで」
2024年3月16日から日本での上映が始まった映画「燃えるドレスを紡いで(DUST TO DUST)」。
名古屋では4/27~5/3の期間今池のナゴヤキネマ・ノイで上映されました。
ざっくりとしたストーリーは、パリコレに参加する唯一の日本人オートクチュールデザイナーである中里唯馬さんが、衣服の最終地点の1つとされるケニアを訪れ現実を目の当たりにし、これからのファッションのあり方を模索してコレクションを作り上げるまでのドキュメンタリー映画です。
ここでは記録として、映画を観た感想をまとめています。
社会が作り出した
服の最終地点
ケニアには各先進国から年間16万トン(1日20コンテナ以上)の古着が届くそうです。古着はマーケット→小さな町村→近くの川や埋立地へと堆積し、環境に悪影響を及ぼしています。そもそもなぜ途上国に古着が集まるのか。そのきっかけの一つになったのが、2000年にアメリカが制定したAGOA(アフリカ成長機会法)。簡単に要約すると「アメリカの古着を低関税で受け入れてくれれば、アメリカへ輸出する物の免税枠を拡大する」というもの。AGOA導入後、アフリカからアメリカへの輸出は増えましたが、それを超える海外古着の流入がアフリカの繊維産業の成長を妨げました。スクリーンに映し出される衝撃的な古着の量と、これ以上服は作らないで欲しいと願う現地の人のインタビューに、どうしようもなく心が痛みました。
各地で起きている
地球環境の変化
撮影チームが古着の埋立場の次に向かったのが、深刻化するケニアの干ばつ地域です。
古来からそこで生活する民族の方々は、過酷な生活の中でもそこにある物を工夫して伝統的な装いを楽しんでいました。民族衣装のカラフルで動物皮革をつなぎ合わせた装いは衣服の起源とも言われているそうです。
そんな民族の方々が訴えていたのは、水の必要性と国際的な援助でした。多くの人は遠くの地域で起きていることに目を向けず、画面で見ても自分には関係がないと思えてしまうかも知れません。しかし、この地に干ばつをもたらしているのはそこで生活する人ではなく、資源を使い、CO2を出し、豊かに暮らす私たちだということに気づかなければなりません。
ファッションをサステナブルに
変革する
中里唯馬さんはパリコレに参加するデザイナーとしてコレクションを発表するなかで、この現実とこれからの服作りを世の中に示そうと制作に取り掛かります。ケニアの古着を利用して新たな生地を作ったり、極力裁断くずを出さない手法で服をデザインしたりと、様々なチャレンジを経てコレクションを完成させます。コレクション後のインタビューで、「一度では世界は簡単には変わらない。新しい服の作り方を示し続けていくことで世の中に受け入れられ浸透していく。」と語られたことが強く心に残りました。影響力のあるデザイナーが先陣を切って行動を起こすことで、その影響を受けて業界の意識が変わり、商品や消費者の選択が変わっていくのではないかと感じました。
服を着る全ての人が何かに気づき、これからの服との関わり方を考えるきっかけになるはずです。
いつかファッションの根本が見直され、ファッション産業が生まれ変わる未来に期待を持ちつつ、それを応援するように私もここで発信していきたいと思います。
またお近くの映画館、サブスクや再上映の機会があればぜひチェックしてみてください!
ー END ー