工場見学&ガラ紡体験 in尾州
2024年6月19日(水)、愛知県一宮市の木玉毛織さんで「工場見学&ガラ紡体験」をさせていただきました。
木玉毛織さんは明治28年創業した老舗機屋(織物工場)で、現在はガラ紡関連の商品製造、販売、手織り教室などもされています。施設内には、新見本工場という尾州の魅力を発信するアパレルショップ、そのほかの縫製所、ニット工場、繊維機械の部品販売修理をされる会社などがあります。
「尾州」という産地は、日本一のウールの産地であり愛知〜岐阜の繊維工場が集まる一部の地域を指します。木玉毛織さんは明治28年創業した老舗機屋(織物工場)で、現在はガラ紡の糸をメインに製造されています。
工場見学では尾州産地がどう発展したのか、編み機・織機・ガラ紡の機械についてなど、盛り沢山な内容で案内していただきました。また、ガラ紡体験からもモノづくりの奥深さやおもしろさを体感することができました。今回参加した見学・体験は木玉毛織さんの WEBサイト から誰でも予約することができます。
ここでは工場見学での学びや感想をまとめてみました。
尾州産地とは
世界三大ウール産地の一つであり、愛知県一宮市を中心とした愛知県尾張西部から岐阜羽島のエリアのこと。この地方で繊維産業が盛んになったのは、木曽川がもたらす豊かな水と肥沃な土地の恵みが大きく関係しているとされています。
ここでは平安時代から麻・絹・綿・ウールと時代に合わせて変化しながら繊維産業が発展しました。明治時代からはヨーロッパのクォリティを目指してウール織物の研究が始まり、世界でその技術が評価されるようになりました。現在は大量生産の時代となり海外の布地が安く多く出回るようになりましたが、尾州のウールは多品種・高品質・少量生産でその価値を守り続けています。
なぜ尾州でガラ紡の綿糸が生産されているのか、というと。かつては愛知県三河地方にガラ紡の紡績工場がいくつかあったのですが、廃業などで行き場をなくしたガラ紡機を木玉毛織さんが引き取ることになったのだそうです。ガラ紡機は全国でも数台しか残っておらず、日常的に稼働しているのは、現在木玉毛織さんだけなのだそうです。
体験して知る
ものづくりの奥深さ
ガラ紡糸の原料には元々「和綿」が使用されていましたが、和綿は繊維が短いため糸にするには切れやすく、一般的に洋綿が多く生産されています。ガラ紡機は短い繊維長しか生産出来ないため、現在は和綿に近いトルコのオーガニックコットンと落ち綿を混ぜて使用しているそうです。
紡績する前のワタを機械に流し、ほぐして丸めてカットして30センチ程の棒状に加工します。できた綿の棒(撚り子)を竹の器具に挟みガラ紡の機械にセットしていきます。つなぎたい糸端をワタに近づけると、勝手に絡み合い糸が撚られていきます。
見ているだけでも面白いのですがやってみると難しさと上手くできた時の感動が味わえます!
ガラ紡の糸は、自然の重みを利用して引き上げることで太さが変化し独特のムラができるのが特徴です。その反面、短い繊維でできているため切れやすく糸として使うには強度が弱かったそうです。そこで、洋綿の細い糸を撚り合わせて強度を出し、凹凸感のあるカベ糸という加工糸が出来上がりました。
このような工夫の積み重ねや、「こうしたらどうなるだろう?」「これを使って新しいものを作ってみよう」など
いろいろなアイデアが膨らむことが、ものづくりの面白さであり奥深さなのではないかと感じました。
尾州のこれから
尾州は機屋(織物)だけでなく、紡績・撚糸・染色・整理加工などの様々な技術があったことで世界に評価されるウール生地の産地に成長しました。かつては人手も多く活気があったそうですが、今は工場が減り職人の方もご高齢になり後継者がいないとも話されていました。尾州には今も最新技術にも劣らない高品質なウール製品や、ウール製品のリサイクル技術などここでしかないものづくりがあります。
今回、見学や体験を通して産地のことをたくさん教えていただき、以前より尾州身近に感じることができました。実際に自分にできることをしたい「応援したい」という思いが芽生え、商品を購入してみたりもしました。
現代の私たちに求められているのは、伝統を絶やさず後世に残すこと。まずは自然の素材を有効活用してきた日本のものづくりを手に取り、その良さを体感していただきたいです。例えば、ウールなら吸湿性・防汚性に優れ乾きやすく、生地の仕上げ方次第で夏でも冬でも快適な万能素材なんです。
モノを通して産地に興味を持ってもらったり、産地で新しいものづくりにチャレンジする人が増えたり、そんな広がりが魅力的な産地を作っていくのではないかと思います。
みなさんも自分にとって身近な産地を調べてみたり、体験があれば行ってみたり旅行先で産地を訪れてみるなど、知るきっかけづくりから始めてみてはいかがでしょうか。
ー END ー