化学繊維の産地をめぐるスタディツアー in 福井

2026年3月9日(月)〜11日(水)の3日間、一般社団法人unisteps が主催するスタディーツアー「繊維王国・福井で服づくりのいまとこれからを見つめる
フィールドトリップ」に参加しました。ここでは、参加した感想を交えて今回のツアーを振り返ります...

福井の産地について

福井産地は、温暖多湿の気候に恵まれ、静電気が起きにくく織物を作るのに適していたことで絹織物の生産が始まったそうです。その後、技術と時代の変化とともに、レーヨン、合成繊維と素材を変えながら、日本有数の織物産地として栄えてきました。特に福井市や鯖江市を中心に、織布から染色、加工、縫製までの一貫したサプライチェーンが形成され、合繊長繊維織物において全国生産量の約4割を占めています。また、スポーツ・アウトドアウェアなどの高機能素材を世界に供給し、環境負荷を軽減する技術(水を使わずに繊維を脱色する福井大学の研究など)や、捨てられる布のアップサイクルなど、持続可能な未来に向けたプロジェクトも進行しています。

参考:福井県織物工業組合ホームページ , 福井県立大学「繊維王国・福井」の強みとは

個性豊かなリボンと超高密度織ネーム

\ 織ネームの国内シェアNo.1 /
株式会社 松川レピヤン

最初に向かったのは、坂井市にある松川レピヤンの子会社「エイトリボン」さん。ジャガードリボンやチロリアンテープなどの可愛い絵柄のリボンを製造・販売されています。工場は、リノベーションされていて外観も今風!内装には織機の廃材などが活用されていたり、至る所にリボンの装飾が施されていて温かみのある雰囲気でした。元々、8人社長さんがいたことがエイトリボンの由来だとか。

工場内に入ると、カラフルな糸がコーンに巻き取られていて、その向かいでは、木製の大きな機械で経糸を整えながら、織機にセットするために大きなボビン(ビーム)に巻き取る「整経」という工程が行われていました。奥の部屋に移動すると、ついにリボンを織る工程へ。織機にセットしたパンチングカードに剣山状の針が当たり、穴の位置で針が突き抜けると経糸が上下し絵柄が織られていきます。リボンを織る織機は、今までみてきた緯糸が端から端まで動く織機と違い、短い幅で動く緯糸が隣に並び、複数のリボンを一度に織ることができます。緯糸が同じ動きをしているのがなんだか可愛いです。

エイトリボンさんでは自社で見学ツアーを実施しているそうなので気になる方はこちらをチェック▶︎工場見学予約ページ

工場の横には、RIBBON'S CAFEという個性豊かなリポンとハンドメイド雑貨が並ぶカフェがあります。予約不要でワークショップもされている様子。レモンケーキがとてもおいしそうでした!



[ エイトリボン ]
〒711-0907
岡山県倉敷市児島上の町3丁目5−5
エイトリボン ウェブサイト -|Instagram - @kaihara_denim.sales
RIBBON'S CAFE ウェブサイト - @kaihara_denim.sales|Instagram - @kaihara_denim.sales

続いて、親会社の松川レピヤンさんに移動し、織ネームの製造工程を見学。100年にわたって、シルク裏地の製造からレーヨン、合成繊維へとシフトし、今では日本で流通する織ネームの約70%を製造されています。得意分野は「超高密度織」。通常の約3倍程度の密度まで織り込むことで、グラデーションや繊細なデザインを表現できるそうです。

工場内に入ると、リボンと変わって、広幅で織りながら熱線でネーム幅にカットしていくレピア織機が動いていました。布端の余白部分は「捨て耳」と言う端材になってしまうそうですが、装飾的な可愛さがあり、地域の人に活用されているそうです。リボン状の織ネームは、ひとつひとつ人の目で検品した後、カットして両端を折り曲げます。検品室では、1日約2万枚もの織ネームを検品するそうで、余白部分まで念入りにチェックしていました。スタッフの方が「織ネームは最終的に誰かの大切な一枚になる。だから小さなキズも見逃せない」と仰っていたのが印象的でした。

松川レピヤンさんでは、レピア織機の他にシャトル織機も扱っており、オーガニックコットンやリサイクルポリエステル糸を使用した織ネームも小ロットから製造できるそうです。詳細はこちらをチェック▶︎



[ 松川レピヤン ]
〒711-0907
岡山県倉敷市児島上の町3丁目5−5
ウェブサイト -
Instagram - @kaihara_denim.sales

紡績から縫製まで一貫型生産と
オーダーメイドが叶う独自のプリント技術

\なんでも自社開発してしまう技術力/
セーレン 株式会社


福井市にあるセーレンさんは、創業当時、絹織物を洗うことで不純物を取り除く「精錬(せいれん)」の工程を行っており、今の社名の由来にもなっているそう。今では、合成繊維・合皮・絹成分の化粧品・インクジェットプリントを得意とし、糸から製品化までを自社で一貫して行う福井の繊維産業を支える存在に。

独自のプリント技術である「Viscotecs(ビスコテックス)」は、''欲しいもの、欲しいときに、欲しいだけ''をコンセプトに、あらゆる素材にパーツの状態でプリントできるというもの。従来のプリント生地に比べて、省資源(水とエネルギーが20分の1)・短納期(2週間程度)・小ロット(一着から)生産できるのでオーダーメイドも可能になるそうです。



[ セーレン株式会社 ]
〒711-0907
岡山県倉敷市児島上の町3丁目5−5
ウェブサイト -
Viscotecs Instagram - @kaihara_denim.sales

国内外ブランドの縫製業の傍ら
工場内ラボでアイデアを形に

\ 代表の織田さんの行動力がすごい /
株式会社 LACORME

勝山町にあるラコームさんは、1948年に縫製業をはじめ、30年ほど前から生産が海外に移行していく中でパンツアイテムに特化していった工場さん。コロナをきっかけに、初めて地域のものづくりに着目し、地域で連携して生地やネームなどの資材を県内調達するようになったそうです。

2Fの工場では、縫製だけでなく、パターン作成から縫製ラインを設計して低コスト化を図ったり、工場内で検反から裁断まで行うことで徹底した品質管理がされていました。1Fの奥には、刺繍やシルクスクリーンなどの2次加工を行うスペースやラボ(実験室)があり、ブランドの残反やハギレの活用アイデアを形にする場になっています。

代表の織田さんのお話から、時代の流れと共にアパレル産業の市場も変化し、服の低価格化や海外の低賃金労働など、様々な課題が見えてきました。ラコームさんでは、SDGsの取り組みとして、パプアニューギニアの雇用を創出する縫製プロジェクトや、小学校でモノづくりの楽しさと価値を伝える裁縫実習、実習を行う先生のサポートなどをしているそうです。工場の仕事だけでなく繊維産業の課題に向き合い、未来に向けて行動するラコームさん(織田さん)、凄過ぎます。。。



[ 浦上染料店 ]
〒711-0907
岡山県倉敷市児島上の町3丁目5−5
Instagram - @urakamisenryoten

羽二重絹織物から養生テープまで
時代を跨ぐ長繊維織物

\ 着物の絹裏地シェアNo.1 /
福島織物 株式会社

鯖江市に移動して最初に訪れたのは、創業から108年続く福島織物さん。建物は、合繊織物と絹織物の2つの工場に分かれていて、それぞれ案内していただきました。

合繊織物の工場では、養生テープの布地部分や品質表示のベースになる素材などを生産しています。まさかここで、養生テープの製造現場に出会うとは思いませんでした!
この日は、品質表示(ケアラベル)の素材を織る様子も見ることができました。使用していたのは「ウォータージェットルーム」という織機。織機の内部までは見ることができなかったので個人的な推測ですが、水圧で緯糸を飛ばしている?ような感じ。水を使用しているためか工場内は湿度が高めでした。生地ができる際に出てしまう糸は、「すて糸」と言って不要な部分になってしまうそうですが、なんとか活用しようと、ペレット化してプラスチック製品にリサイクルしているそうです。

着物の裏地に使われる羽二重絹織物のシェアは約70%。着物離れが進む中でも需要はなくならない、羽二重絹織物の技術を守り、品質を追求しながら丁寧な仕事を続けていらっしゃいます。
羽二重絹のふわっと滑らかな質感は、「ぬれよこ」と言う緯糸を濡らした状態で織ることで生まれるそうで、乾いた状態だと逆にパリッと仕上がるのだそうです。なんとも興味深いです〜



[ 福島織物(株) ]
〒916-0017
福井県鯖江市神明町4丁目5-10
公式サイト - https://www.fukukinu.jp

「I am Sustainable」で
品質とサステナビリティを追求する

\ 本気の環境配慮型モノづくり /
高島リボン 株式会社

次に訪れたのは、リボンを専門に製造する高島リボンさん。品質にこだわり、シンプルなものからデザイン性の高いものまで多彩なリボンを作っています。
グログランテープやデザインテープの他に、高島さんを代表する「両面別珍リボン」の製造工程や、高圧捺染・連染などの染色工程も見せていただきました。両面別珍リボンの細いパイルをカットする様子は、1秒も目が離せない職人技で、機械では真似できない繊細な感覚が必要になりそうでした。染色工程で出る排水については、近隣の染色工場と協力して排水システムを整えたそうで、産地全体で取り組まれているのが素晴らしいと思いました。

高島さんの特徴の一つに、脱炭素や廃棄物の活用など環境配慮型のモノづくりがあり、エコテックスやSBTiの認証を取得しています。「I am sustainable」の文字が印象的なパターン帳は、コロナをきっかけにリサイクル原料に切り替え始めて生まれた ’’サステナブルマテリアルブランド’’ で、オーガニックコットンやRENUなどのリサイクル素材を積極的に採用しています。リサイクル原料は、一般的にコストがかかる印象がありますが、リボンなどの細幅織物ではそこまで大きくコストに響かないそうで、バージン原料を使ったものと価格を変えずに販売しています。コストを理由にしないサステナブルなモノづくりがどんどん広がってほしいです!



[ 高島リボン(株) ]
〒916-0016
福井県鯖江市神中町2丁目6-36
公式サイト - https://takashimaribbon.com

「水を使わない」染色技術とは!?

\ 福井の産学官連携のハブ的存在 /
福井大学 文京キャンパス
産学官連携本部

最終日、路面電車に乗って向かったのは、福井市にある福井大学文京キャンパス。
ここには、未来共創テキスタイルセンター内に産学官連携本部があり、地域と連携して産業分野のさまざまな研究が行われています。今回ご紹介いただいたのは、水を使わない染色技術の研究、その名も「超臨界流体染色・加工」。どんなものかというと、二酸化炭素の温度を上げ、気体と液体の間の状態を作り出し、そこに染料を加えて布に定着させるというもの。二酸化炭素の臨界温度は31.1℃のため、省エネルギーで、かつ一切水を使わずに染色だけでなく脱色もできてしまうという、まさに夢のソリューションです。

現在の染色方法では、年間で約58兆リットルの水が消費され、全産業の排水のうち約20%を染色産業が占めています。また、染色する際に水を沸騰させたり、短時間で乾かしたりするために多くの熱エネルギーが必要で、エネルギー消費を原油換算すると3,680万キロリットルになるそうです。染色工程は、服のサプライチェーンのうち約3割ものCO2を排出しています。



[ 福井大学 産学官連携本部 IF-STUDIO (未来共創テキスタイルセンター内) ]
〒910-8507
福井県福井市文京3丁目9番1号
公式サイト - https://hisac.u-fukui.ac.jp

ー END ー