サステナブルファッション EXPO

FaW TOKYO 4th ファッション EXPO 春


2024年4月17日(水)〜19日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催された「FaW TOKYO サステナブルファッション EXPO」に行ってきました。会場では国内外から90社以上が出店し、様々な最新のサステナブルプロダクトを見ることができました。また、セミナー会場では3日間で全20講演が開催され、特に気になった講演を受講してきました。

ここでは気になったいくつかのプロダクトと
受講したセミナーの内容を簡単にご紹介します!

01 多様化する服のリサイクル


廃棄衣類から水素へ

廃棄物から再生可能エネルギーの生産を目指す「BIOTECHWORKS-H2」プロジェクトの「REBORN」は、事前に登録された衣類を回収し、ケミカルリサイクルによって水素を作るというもの。
商品を販売するアパレル企業が販売前の商品情報を登録し、商品をケミカルリサイクルした際の水素生成量などを算出。その情報が読み取れるQRコードつきの「REBORN認証ラベル」を商品につけ販売することで、消費者はラベルを介して環境貢献度を確認できるようになります。


どんな服も糸・ボード・紙・燃料へリサイクル

回収した単一素材の服はリサイクルヤーン(糸)として再び糸にリサイクルして販売し、通常(混紡素材など)素材によって服への再生が難しいとされていた衣類は、繊維リサイクルボードや繊維を配合した紙、バイオコークスという燃料へのリサイクルを可能に。回収した衣類を余すことなく再生し、有効活用するという循環プロジェクトです。
Withal マルチサーキュラーエコノミー


原着リサイクルポリエステル

通常、繊維は布にしてから染色する為、洗濯や日光による色落ちは常識でした。「原着」という方法は、ポリエステルを原料の段階で着色して糸を作ることで色落ちせず、糸や布の染色に必要な水を削減できるというもの。ポリエステルの原料もリサイクルPETを100%使用し、製品は再びポリエステル製品にリサイクルできます。今の段階では、生産にある程度のロットが必要なため、学生服やユニフォームへの採用が期待されています。
三栄コーポレーション「e.dye®︎」


02 最新技術が生み出す新素材


生分解性しやすいポリエステル

海に流れた化学繊維は性分解されるのに数百年かかると言われています。化学繊維の性分解スピードを加速させるため、CiCIO®︎ファイバーは、原料ポリマー溶融時に微生物が好む添加物をブレンドすることで、生分解性の高い化学繊維になります。この技術は、通常の化学繊維の色や強度リサイクル繊維にも応用できるそうです。

(株)JATECのCiCIO®︎ファイバー


大豆タンパクからつくる大豆繊維

植物性タンパク源として注目される豆乳や豆腐の加工過程で出る大豆粕を活用して生まれたのが大豆繊維です。
大豆繊維は、引っ張り強度や染色対応の観点から大豆成分30%とポリビニルアルコール70%から作られ、大豆に含まれるアミノ酸による抗菌・防臭機能があります。素材感は、光沢がありリヨセルに近い滑らかな肌触りで、衣服以外にも寝具やタオルなどに展開可能だそうです。
(上海)日晶繊維有限公司


ウールと合成フィラメントの多機能素材

消臭・吸湿性に優れたウール(短繊維)に、乾きやすく強度のある化学繊維のフィラメント(長繊維)を組み合わせることで、洗濯によるマイクロプラスチック流出を削減するサステナビリティウールヤーン。
ウールの高級感のある肌触りが化学繊維によって長持ちするという、インナーにも最適な機能素材です。

御幸毛織(株)「Manerd®︎-EE eco eyes」環境配慮型ポリエステル使用ウール複合糸


魚の鱗を活用したコラーゲン繊維

養殖漁業が盛んな東南アジアで魚の加工時に廃棄される鱗を活用した繊維。鱗からコラーゲンぺプチドアミノ酸を抽出し、ポリマーと結合させて作るポリエステルの糸(コラーゲンヤーン)です。
コラーゲン成分によって含水率16%の保湿効果があり、肌当たりが柔らかく、静電気防止効果も期待できるそうです。

(株)サードオフィス ACAPのマーメイドクロス


03 インドで育てる有機コットン


興和(株)の「P.I.C プロジェクト」

インドの既存のコットン農家と直接契約し、オーガニック農法を教えて畑の管理を行い、一緒にオーガニックコットンを育てるというオーガニックコットンプロジェクト。
現地のコットン農家はサポートを受けながらオーガニックコットンの栽培へとシフトすることができ、健康・安全な労働環境と土壌改善による生態系の保護へとつながります。
オーガニックコットンとして流通するには3年の無農薬栽培実績が必要ですが、1〜2年目で収穫したコットンも「ユースコットン」と名づけ、応援の気持ちで活用してもらえるような取り組みがされています。
オーガニック農法が広がるだけでなく、収穫した綿は確実に買い取ってもらえることで契約農家の生活が安定し、製品になっても興和を通じてトレーサビリティが確保できるという利点があります。


04 サステナビリティセミナー

未来のマーチャンダイジングと店舗戦略


学生による若者の意識調査報告

東京を中心に602名の若者にアンケート調査を実施したところ、購買行動として半数が洋服を非計画的(衝動的)に購入しており、サステナビリティに着目して買い物をするかどうかでは、「着目している」が4分の1程度にとどまりました。
上の年齢層と比較すれば多い結果になるのかも知れませんが、未だにファストファッションの手軽さが支持されいる点や、認知が進んでいない現状を感じ取ることができました。
また、洋服を選ぶ際、若者は「垢抜け」や「タイパ」を意識しているそうで、事前にネットやSNSで気になる商品をピックアップし、隙間時間で店舗に訪れ試着をして購入するパターンや、自分に似合う=垢抜けるという考え方のもと、パーソナル診断などを活用して自分にとって付加価値があるものを求める傾向があるそうです。
若者にとってサステナビリティは、コストやデザインという要素が揃った上で受け入れられるものになるという印象を感じました。

アダストリアのマルチブランド戦略

アダストリアには現在30を超えるブランドがあり、それぞれのブランドの個性を引き立てることで多様化する消費者ニーズを掴もうとしています。そこで必要なのが、コレクション/マガジン/店頭のみならず、ネットやSNS/顧客マインドなどのあらゆる情報を収集・分析し、それぞれのブランドの個性やトレンドの取り入れ方に反映させる「トレンドキャスティング」の考え方だそうです。
アダストリアとしては、全ブランドで1千700万人の顧客から支持されていることに責任を感じ、ブランドの個性が一人一人のニーズに寄り添い、長く一緒にいられる商品を作りを目指しています。
サステナビリティに関しては、古着のリサイクル/型落ち商品をオフストアで販売/染め直しサービス/サステナブル素材の開発に取り組んでいるそうです。そういった取り組みが店頭でより感じられるように浸透していってほしいと思いました。

三井不動産 LaLaport CLOSETでの提案

公式通販サイト''&mall''のサテライトショップとしてららぽーとTOKYO-BAYに第1店舗目を構えた「LaLaport CLOSET」では、パーソナル診断/QR検索/注文商品の試着などのサービスがあり、自分に似合うものを知ることができ、提案までしてくれる体験型店舗となっています。
有料パーソナル診断サービスの利用者は30〜40代が多く、PLUS MIRRORという大きなディスプレイを使った無料診断サービスは手軽なため20代の利用者が多いそうです。このような診断サービスを充実させることで、顧客は自分に合うものがわかる→購買意欲が高まる→提案によりほしいものが見つかる→ららぽーと(&mall)で購入するという心理的な流れを生み出しています。
自分に似合うものがわかった上で服を購入することによって、お買い物の満足度が上がるだけでなく、買い物の失敗が減ると服の廃棄削減にも繋がります。

今回のEXPOでは、次々生み出されるサステナブル新素材や生産過程へのアプローチを見て知ることができ、これからより一層サステナブルな洋服が店頭に並び人々の生活に浸透していく未来に期待感を感じました。まだまだロットや価格などのハードルもあり、みんなが安く手に取ることは難しいかも知れませんが、できるところから素材の採用や認知が広がっていけばいいなと思います。

ー END ー

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