FASHION REVOLUTION 2025

2025年4月25日に、渋谷TRUNK HOTELにてシンポジウム「Waste to Wear : ゴミになる服、ならない服」が開催されました。シンポジウムでは、キーノートスピーチと4つのセッションが行われ、服のリサイクルの現状や廃棄の問題にどう向き合うかについて、様々な方々の目線でセッションが交わされました。
〈 Program Line up 〉
#KEYNOTE SPEACH
欧州の挑戦から学ぶ、繊維循環の最前線
#SESSION 01
日本から世界へ、ファッションロスゼロの展望
#SESSION 02
手放した服はどうなっているのか?調査データから読み解く
#SESSION 03
国際資源循環の可能性(リユースの未来)
#SESSION 04
服から服のリサイクルは、どうすれば実現できるのか(リサイクルの未来)
ここでは、特に気になったセッションの内容を簡単にご紹介します。
#SESSION 01
日本から世界へ、
ファッションロスゼロの展望
登壇:小泉進次郎氏(元環境大臣 衆議院議員)、松田崇弥氏(株式会社ヘラルボニー 代表取締役Co-CEO)
ファシリテーター:鎌田安里紗(一般社団法人unisteps 共同代表理事)
元環境大臣としてファッションロスゼロ政策に取り組まれていた小泉さんと、知的障害のある作家の作品を商品化し販売している松田さんのセッション。
それぞれの思い
小泉さん
政治家として活動する中で、「日本から出ていく富を食い止めたい」という思いから、国内自給率や資源循環などにおける日本の安全保障を考えていこうと活動されているそうです。
松田さん
障害をもつ作家のアートを製品化し、新たな価値を生み出す事で障がい者の経済的自立を目指す反面、その製品を創っている生産者が苦しい思いしていては矛盾になるのでは?という思いから、ブランドとしてネガティブな環境を生み出す加担をしない’’責任あるモノづくり宣言’’をされているそうです。
取り組みと課題
小泉さん
環境大臣をされていた時、ファッション分野のプロジェクトを進める中で、政府全体の動きにするためには関係省庁を巻き込んでいかなければいけないと思い、繊維産業を管轄する経済産業省の協力を得て、資源循環を促進する法律の制定にも取り組んでいくそうです。ただ、「いかにマーケットメイクをしていくか」や「資源循環におけるトレーサビリティを作っていく難しさ」などの課題も多いと話されていました。
松田さん
ヨーロッパでは’’社会に配慮している’’ことが当たり前になっており、今後ヨーロッパで展開していくためには、社会貢献を目的にするのではなくビジネスをする上で当たり前に取り組んでいく必要があるそうです。
ただ、サステナビリティを高めることが商品価格を上げられる理由になるところまではいけていない、と感じているそうで、商品の素材を再生素材に移行するなど、できることから一つずつ取り組んでいらっしゃるそうです。
会場へメッセージ
小泉さん
責任をもって生産された服とそうでない服の価格差や、国内繊維産業の減少、資源循環の仕組みづくりなどの問題がある中で、ファッションの問題と政治は繋がっていることをより多くの人に知っていただき、ファッション業界をより良くすること、社会問題を解決することに政治家をもっと使ってほしい、と話されていました。
松田さん
ヘラルボニーのビジネスで、障害者への偏見や固定概念を覆し知的障害のある方がたくさん確定申告をするようになる、尊敬される、憧れられる世界を見たいと思っていて、作った商品の行く末を見ないようにするのではなく、最後まで責任を持つことで売り上げが上がれば上がるほど、社会が良くなっていることを断言できるようなことをしていきたい、と仰っていました。
#SESSION 02
手放した服はどうなっているのか?
調査データから読み解く
登壇
向千鶴氏(ファッションジャーナリスト )
近藤亮太氏(環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室長 兼 循環型社会推進室長)
環境省のあゆみ
1971年に’’ 環境庁 ’’ができ、自然保護や公害対策など問題に対処することを中心に活動していた。
しかし、問題に対処するだけではこの先の問題は良くなっていかず本質的な対策が必要だとして、社会のあり方を根底から変えるために2000年の省庁再編で '' 環境省 ''となり、資源循環なども担当していくことになった。
データから分かること
国内に供給される衣料品の環境負荷
・CO2排出量、水使用量ともに日本全体の約1割を占めている
衣類のマテリアルフロー
・事業者から販売業者に売られる服は4万一千トン、そのうち排出は4万トンということから事業者の服はほとんどリユースされていない。
・販売業者から家庭には77万一千トン売られていて、家庭からの排出は57万七千トンなのでそこそこリユースに回せている。
▶そもそも供給したのは企業であり、企業が作ったものが家庭からゴミとして排出されている
・CtoCリユース量はまだ少なく、着れる余地のあるものが捨てられていることがわかる。
・一度掘り出した資源は最後まで使い切ることが大事なので、何らかの形で次のものに繋げていく必要がある。
Q. 複雑な素材のリサイクルについてどのように考えていますか?
A. ケミカルリサイクルはとにかく技術開発に尽きる。マテリアルリサイクルは、いかにビジネスベースに繋げて仕組みを作っていくか、今スタートラインに立っているところ。
繊維製品の国内廃棄の実態(容器包装リサイクル法に基づく調査)
・資源ごみ(古着)の半分近くが女性用の衣類。
・可燃ごみでは下着、タオル、靴下など、洋服以外の分野が多い傾向がある。
▶︎女性用が多い理由として、トレンド性やシーズン性の高いものが多いと考えられる
新品衣類の所有量と年数
・使用量と着用されずに仕舞われている退蔵量はほぼ同量。
・消費者アンケートから着用年数でも同じくらいの年数が着ないまま退蔵されていることがわかった。
・スーツは比較的長く着用される傾向にあるが、ニットは着る機会も少なく捨てられるまでの期間も短い。
・新品衣料を手放す方法としては約6割が燃えるゴミで廃棄されている。
・廃棄量の約3分の1を占める93千tにリユースポテンシャルがある。
・その内訳ではズボン、スカート、コート、ニットが多く、まだ着られる状態で廃棄に出されている。
▶実際にゴミ袋を開けて調べた結果はイメージと違うこともある
▶着ないまま仕舞い込んでいると匂いが着いたり虫食ったりして着れなくなってしまうことがあるため、もう着ないなと思ったタイミングでリユースに回していく必要がある。
▶趣味嗜好はどうしても変化していくものだが、退蔵しておくのではなく需要がある早めのうちに次の人に渡すことで、再利用に繋がりやすくなる。
▶最初にいいものを作ることはとても重要で、その後リペアリユースで長く使えることに繋がる。
回収業者へのヒアリング
・回収品目を1つ増やすにもコストがかかる。回収業者の人件費の負担も大きい。
・回収する曜日が限られており、消費者からするといつもの動線で気がついた時に出せる状態の方がメリット大きい。
・洋服店やスーパーなど身近な回収拠点を増やしていく必要がある。
環境省は何をしているか?
① データの整備
② 回収ルートを増やして行くための活動
③ 集めた後の行先、リユース・リサイクルに繋がる仕組みづくり
今年度からモデル事業の形を変えて、いかに付加価値を作っていくかを重要視した取り組みも始めていくそうです。
最後に「資源を取らないことが一番環境に優しい」ということを話されていて、国民ひとりひとりが消費を見直し、みんなで資源循環を目指していくことが大事だと思いました。
#SESSION 03
国際資源循環の可能性
(リユースの未来)
登壇
坂野 晶氏(株式会社ECOMMIT 上席執行役員CSO 兼 ESG推進室長)
Urska Trunk氏(Changing Markets Foundationシニアキャンペーンマネージャー)
リユース・国際循環の最新レポートから
未来の可能性と課題を読み解き、
異なる角度で活動しているお二人のセッション
服を着終わったら、それはどこへ行ってしまうのか?
Changing Markets Foundation,環境NGOとして無責任な業界の動向を調査し、報告する仕事をされているUrska Trunkさん。
EUでは、史上初めて繊維とファッションに関する規制(デザインから廃棄、グリーンウォッシングまで)が施行されようというとても重要な時なのだそう。
輸出される廃棄物についても現在調査をし、データ分析をしていく中で、EU、英国、そして他の国々から多くの衣料が持ち込まれるケニアに注目しました。
そこでは、EU、英国から、文化面、サイズが合わない、気候に合わない衣服をグローバルサウスへ輸出され、その20-50%はすぐに廃棄物になり、大半は埋め立てられていたそうです。
送られた服は、行き着いた先で土になり、自然に入り込んで、川を通って海に流れ出てしまい、そして、マイクロプラスチックを含む素材が海へ流出していく現状があります。
このような、プラスチック素材の衣服が大量に生産輸出され、最終的にグローバルサウスで処理されるという動きは、ファストファッションの流行で加速しているそうです。
この現状に対するファッションブランドの対応とは?
多くのブランドはこれに対し、古い衣服をリサイクルするとして、回収ボックスを設けています。
そこで、21のアイテムを4カ国、10の店で服を回収させ、どうなるかを検証したそうです。
回収に出した衣類は状態の良いものでしたが、その11か月後、76%の衣服は破棄されていました。燃料になったり、どこかシステムの中でとまっていたり、輸出されたり、いずれにせよリサイクルなされていないという状態だったそうです。
リサイクルボックスでの回収は、消費者からするとリサイクルされるものと思われますが、実際はそうではなく、ファッション業界がこの課題に取り組んでいると思われながら、実際はそこから現状は遠いということ。さらには、これらの回収衣服の持ち込みでクーポンなどがもらえ、来店のきっかけになることからファストファッションの仕組みを一層加速させるものになっているそうです。この現状を知ってもらいたいと、YouTubeでも動画をあげています。
ECOMMITの取り組みとは?
(以下 株式会社ECOMMIT 坂野 晶さんから)
ECOMMITは、エコにコミットするという社名にもあるように、国内外で循環のために色々な取り組みをしています。
創業は2007年、鹿児島のかなりローカルなところではじまったそうです。中古機械の回収と販売から始まり、商品のカテゴリを拡大していきました。衣服や繊維は2012年頃からはじめ、国内で支店を展開していきましたが、今、あらためてビジネスモデルを考え直し、循環のモデルになるよう、回収、選別、そして再流通へと、循環の中ではバックエンドと言える部分に取り組んでいます。
現在、回収ポイントを拡大し、選別にも専念しており、ブランドや状態を見分けて再販売のグレードを選別できる人、再販売できない場合は素材を見分ける人が従事しています。そして、選別した衣類を受け入れてくれるパートナーを国内外に持ち、国内、海外にどれくらい分配されたか、また、どれくらいのCO2排出インパクトがあるのか(焼却に比べ)をデータで見られるようにしているそうです。
PASTOの取り組みとそこにある想いとは?
だれかに「パス」するような感覚で、なるべく居住地の近くに利用しやすい環境を作り、燃えるごみに捨てるより魅力的なオプションになるように、国内各所に青い回収BOXを設置しています。
衣服を捨てる時、「クリーンな処理」が存在しない今、ほぼ間違いなく環境に影響を与える形で処理がなされます。
それに対して、晶さんが消費者に求めたい事として、「量より質に重きを置き、本当に愛するものを買って、交換したり長持ちさせるかたちで使ってほしい。その上で、どうしても捨てるときは、処理のデータを見せている所に持って行ってほしい。ただ、まずは、一番最初の買う時点で、自分の判断について本当に考えてほしい。」と話されていました。
ー それに加えて「システムをどう変えていくか」という点について
PASTOを使っている人へのアンケートの結果、今まで意識がなかった人も循環に繋がる選択肢を知った事で、回収の点だけではなく自分がどう服を購入するかを考え、買って使ったあとにどうなるかを気にするようになってきているそうで。「これは、システムを理解していくステップであり、先に行動があってそれをやっている中で意識が変わっていくということを信じ、そこからシステムを変えていくことができると思っています。」と晶さんは話されました。
地球レベルでの「循環」における構造上の課題とは?
日本では、もはや自分が着る服を国内で作っておらず、国内自給率は2%以下に。つまり、グローバルの巨大なサプライチェーンに頼り、世界のどこかで育てられたコットンを使い、どこかで縫製されたものを着ているという事。
そのため、着た後の服をまた海外に輸出するのは決して不自然なことではなく、服としてリサイクルするのに服を作れない国内にあっても仕方がないと言えます。しかし、適した場所に適切に送り届けるには、トレーサビリティの確保やそのための規制と、選別したものを買ってくれる先の’’需要’’を理解する必要があります。
需要とは、ファッションのトレンドのことで日本でのトレンドとタイとでは異なり、日本よりもタイでより価値を見出してくれるようなこともあるそうで「再流通の市場」も需要視されます。タイは最大の市場となっていて、実際に現地の人たちと仕事をしたりする中で現地の需要を見極めているそうです。
ー いろいろなステークホルダーのなかで、変えてほしいことがあるとしたらなんでしょうか?という質問に
まずは立法の面で、循環において追加で発生するコストに対する助成や投資が必要とされているそう。
EUでは、新たな法規制により、EUで販売したいブランドも従わないといけないため、ファストファッションブランドは、EPRに基づいて自社の製品がどう捨てられるかを気にするようになってきている。
ただ一方で、他の国でも行われるよう、野望的なシステムを考えることも必要だと仰っていました。
また、消費者でも変えられることがある。として、それには「市場をみる」ということが大事になるそう。
選別を国内でやるにはコストかかると同時に、その内訳を見て''市場に必要とされていたモノ''がわかります。
さらに、選別においては、''輸出前に選別をすることを義務付けるべき''というのが結論の一つに挙げられました。
現在、EUの中で選別の義務付けが議論されており、実際には使えるような衣服、素材が裁断され、破棄される現状がある中で、とても重要なポイントになると仰っていました。