デニムスタディツアー in広島・岡山


2024年8月2日(金)〜3日(土)にFASHION REVOLUTION JAPANが主催する「デニム生産の現場からファッションの透明性について学び考える旅 広島・岡山2日間」というスタディーツアーに参加しました。一般社団法人unistepsさんと、瀬戸内初のデニムブランドであるITONAMIさんに案内して頂きながら、参加者の皆さんと学んできました。

デニムの産地について

岡山デニムとして知られるデニムの産地は、備後・備中・備前からなる「三備地区」と呼ばれ、現在の広島東部〜岡山にあたります。「三備地区」の備後・備中エリアでは、藍の栽培が盛んで藍染を用いた「かすり生地」が有名だったり、岡山の児島エリアでは、埋立地が多くあったことで土地に塩分が多く含まれ、塩分を吸収する作用がある綿花の栽培が行われていたそうです。1900年以降、学生服の生産が盛んになりましたが、化学繊維の登場で生産が海外に流れてしまったと言います。そんな時、アメリカのジーンズに目をつけ、藍染の技術を用いてジーンズの生産が始まったそうです。

今回のツアーでは、インディゴ染色・デニム生地の織り・ジーンズの縫製・製品染め/洗いの各工場を見学・体験させていただき、ジーンズができるまでの工程を勉強させていただきました。

DAY1 インディゴ染め

\ 国内最大規模 /
カイハラ株式会社さん


福山駅からバスに乗ってまず最初に向かったのは、紡績・染色・織布・整理加工を一貫して行なっているカイハラ株式会社さん。「カイハラデニム」としても有名で、多くのブランドが別注していたりします。
カイハラさんでは、インディゴ染めの工程を見学とハンカチのインディゴ染め体験をさせていただきました。
工場内には各国から取り寄せた染める前のサラシ糸(コットンの生成り糸)が太さ別に積み上げられていました。その糸を染色機にセットするために、ビームという大きな糸巻きに巻き直していきます。染色の前に、油分や汚れを落とすための「洗い」の工程があります。インディゴ染めは、染液を空気に触れさせることで発色するため、染液につけては引き上げを繰り返し深い紺色に染めていきます。そしてアイロンの原理で急速に乾かしインディゴの糸が完成します。
基本的に染色は、洗う工程が多いため水を多く消費してしまうのですが、カイハラさんではできる限り再利用をし、水消費量の削減に取り組んでいました。他にも無駄を出さないサステナブルポイントを楽しそうに教えてくれました。

カイハラさんのInstagramではスタッフの方々のデニム愛を垣間見ることができます▷ @kaihara_denim.sales

DAY1 デニムの織り工場

\様々なデニム生地を手がける/
篠原テキスタイルさん


次に向かったのは、デニムの織り工程をおこなう篠原テキスタイル株式会社さん。
篠原テキスタイルさんは、テンセルデニムやリサイクルデニムなど、バリエーション豊かなデニム生地を手がけています。
工場内を見学する前に、糸を撚り方やデニムの織り、ダメージの付け方などについて解説していただきました。工場内にはインディゴに染め上げられた糸が並んでいました。工場の奥に進むとエアジェット織機とシャトル織機があり、1日に6000m~7000mの生地を織っているそうです。織機には何千本もの針(生地巾分の)がついているのですが、その糸を替える際は針金を使って人の手で通していると聞いて驚きました。
篠原テキスタイルさんでは、デニムやコットンの糸をアップサイクルしたソックスやスリッパなどの商品も販売しています。公式Instagramから取り組みやオンラインショップを見ることができます▷ @shinotex

DENIM HOSTEL float


今回宿泊させていただいたのは、ITONAMIさんが運営する宿泊施設「DENIM HOSTEL float」。和モダンな雰囲気で、全室 ''瀬戸内海ビュー'' のゆったりできるお部屋でした。ディナーは、この土地で採れたものを使ったワンプレートをいただきました。特にラザニアが絶品で、一緒にいただいた特製のレモネードも苦味が効いていて美味しかったです。

食事の後は、各自で持ち寄ったジーンズをリサイクルするために、付属を取り外す’’解体体験’’をしました。ジーンズに必ずついているボタンやファスナーやリベットといった付属は、リサイクルの際に手作業で取り外す必要があります。実際に私物のジーンズを解体してみると、しっかりとしたデニム生地に鋏を入れるのは力が必要だったり、全部で8パーツもの付属がついていて、洋服の中では多いなと感じました。

デニムのリサイクルは、生地を小さく刻み、反毛をして再度ワタの状態にし、強度を出すためにバージンコットンを混ぜて糸にしていきます。リサイクルしてできた糸は、デニムを感じさせる青みがかったグレーになります。
最近のジーンズはストレッチ性を高めるためにポリウレタンが含まれていることがありますが、デニムとしてリサイクルするにはコットンが95%以上のものが望ましいそうです。デニムは同じ色合いのものが多いため収集しやすく、混率や色味が安定しているためリサイクルしやすい素材と言えます。

ITONAMIさんでは「FUKKOKU」というシリーズでリサイクルデニム糸を使った商品を販売しています。他にも岡山産にこだわったデニム商品を展開しているので、ぜひチェックしてみてください。


[ DENIM HOSTEL float ] 岡山/児島
〒711-0905
岡山県倉敷市児島唐琴町1421−26
アクセス - 駐車場有
Instagram - @denimhostelfloat
公式サイト - https://www.denimhostelfloat.com

[ ITONAMI ]
Instagram - @itonami_jp
公式サイト - https://www.ito-nami.com

DAY2 洗い加工と炭染め

\ 染めと洗い加工のプロ /
浦上染料店さん

2日目の最初は、染め・洗い加工をおこなう浦上染料店さんを訪れました。
浦上さんは元々染料の販売をされていましたが、天然染料を使った染めの技術を取り入れ、様々な染め加工を手がけています。また、工房内には大きなワッシャー機があり、かつては複数枚の服を一度に洗濯するのに使用していたそうですが、現在は軽石を入れて洗う「製品洗い加工」もされています。

今回は「紀州備長炭染め」を体験させていただきました。色味は濃いグレーと淡色グレーがあり、二手に分かれて工程を学びました。淡色は「白炭」を使って染めるというもので、まずは油分や汚れを洗い落とし、カチオン化をしてから備長炭のペーストを溶かした染液で染め、バインダー処理で色を定着させます。
染める前に染めムラを防ぐ服の扱い方や、草木染めの豆知識などもレクチャーしていただきました。暑い日でしたが熱心に教えてくださり、とても充実した時間でした。

洗い加工は、ビンテージ感として服の魅力を増してくれるものですが、商品を均一に、希望通りに仕上げるのはまさに「至難の業」だということを改めて知ることができました。加工を施す職人さんの技術も服をデザインする大事な要素だと感じました。



[ 浦上染料店 ] 岡山の南の端っこ
Instagram - @urakamisenryoten

DAY2 国産ジーンズの縫製工場

\ ミシンをカスタムして効率的な生産を行う /
角南被服さん

最後に訪れたのは、日本製ジーンズの縫製を手がける角南被服さん。ここでは一日に約500本程のジーンズを縫製しているそうです。

効率的に安定した品質のジーンズを縫製するために、工程に合わせてミシンを改造したり、必要な部品を取り付けたりするなどの工夫が凝らされていました。それによって、経験の浅い職人さんも製品をきれいに縫い上げることができ、同時にストレスフリーに働ける職場の環境づくりにもつながっているように感じました。

縫製工場の中では中規模の工場と言いますが、ジーンズの縫製でこの規模でやっている工場はもう日本にないのだそうです。その希少さは、海外の取引先もここでしか頼めないと依頼するほどで、メイドインジャパンのジーンズを代表する唯一無二の縫製工場さんです。



[ 角南被服(有) ]
〒711-0907
岡山県倉敷市児島上の町3丁目5−5
公式サイト - https://sunamihifuku.co.jp

今回のスタディツアーを終えて、ひとことに「デニム」と言っても、風合いや素材の加工やリサイクルでいろんな表情を見せてくれるジーンズの奥深さを知り、自分中でデニムの魅力が増した気がします。
店頭では知ることができない作り手の方の人柄にも触れることができ、日々デニムに向き合う皆さんの''デニム愛''を垣間見ることもできました。
一本のジーンズができるまでにこんなにも多くの工程があり、その一つ一つに人の手がかかっているんだと実感することができました。
手持ちのジーンズを今まで以上に大事に着ていきたいと思います。

ー END ー

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